2022年9月23日、ノイズキャンセリング機能を搭載するAppleの完全ワイヤレスイヤホン「AirPods Pro(第2世代)」が登場しました。
第1世代の登場が2019年10月30日ですから、3年振りのアップデートとなります。第1世代の完成度が高かったこともあって、第2世代の登場は個人的にも楽しみにしていました。
「AirPods Pro(第2世代)が気になる!」という方はきっと多いのではないでしょうか。購入を検討されている方は、ぜひ本記事を参考にしていただければと思います!
AirPods Pro(第2世代)と第1世代の違いを比較
レビューをご紹介する前に、「第2世代は第1世代と比べて何が進化したの?違いは?」というところをまとめました。
AirPodsモデル | AirPods Pro(第2世代) | AirPods Pro(第1世代) |
---|---|---|
発売日 | ● 2022年9月23日 | ● 2019年10月30日 |
タイプ | ● カナル型 | ● カナル型 |
搭載チップ | ● H2チップ ● U1チップ(充電ケースに内臓) | ● H1チップ |
通信 | ● Bluetooth 5.3 | ● Bluetooth 5.0 |
音楽機能 | ● 最大2倍のアクティブノイズキャンセリング ● 外部音取り込みモード ● 適応型環境音除去 ● パーソナライズされた空間オーディオ ● ダイナミックヘッドトラッキング | ● アクティブノイズキャンセリング ● 外部音取り込みモード ● パーソナライズされた空間オーディオ ● ダイナミックヘッドトラッキング |
センサー | ● 肌検出センサー ● 動きを感知する加速度センサー ● 音声を感知する加速度センサー ● タッチコントロール | ● デュアル光学センサー ● 動きを感知する加速度センサー ● 音声を感知する加速度センサー ● 感圧センサー |
バッテリー持ち | ● 最大6時間の再生(空間オーディオ/ヘッドトラッキング有効時は最大5.5時間) ● MagSafe充電ケース込みで最大30時間の再生 | ● 最大4.5時間の再生(NCオフ時は最大5時間) ● MagSafe充電ケース込みで24時間以上 |
充電方法 | ● MagSafe充電 ● Qiワイヤレス充電 ● Apple Watch磁気充電器による充電 ● Lightningコネクタ | ● MagSafe充電 ● Qiワイヤレス充電 ● Lightningコネクタ |
耐汗耐水性能 | ● IPX4(AirPods Proと充電ケース) | ● IPX4(AirPods Pro) |
サイズ・重量 (本体) | ● サイズ・30.9 x 24.0 x 21.8 mm ● 重量:5.3 g | ● サイズ:30.9 x 24.0 x 21.8 mm ● 重量:5.4 g |
サイズ・重量 (充電ケース) | ● サイズ:60.6 x 45.2 x 21.7 mm ● 重量:50.8 g | ● サイズ:60.6 x 45.2 x 21.7 mm ● 重量:45.6 g |
パッケージ内容 | ● AirPods Pro(第2世代) ● MagSafe充電ケース ● シリコーン製イヤーチップ(4サイズ) ● Lightning – USB-Cケーブル | ● AirPods Pro(第1世代) ● MagSafe充電ケース ● シリコーン製イヤーチップ(3サイズ) ● Lightning – USB-Cケーブル |
その他 | ● スピーカー搭載のMagSafe充電ケース ● 「探す」アプリの「正確な場所を見つける」機能に対応 ● ストラップループ搭載のMagSafe充電ケース | ─ |
価格(税込) | ● 39,800円 | ● 38,800円(Appleでは販売終了) |
進化ポイントを赤文字にしています。音に関する機能だけでなく、使い勝手に関する機能まで全体的にアップデートされていることが分かります。
- 第1世代と比べて最大2倍の雑音を消すアクティブノイズキャンセリング
- スワイプで音量調節できるタッチコントロール
- バッテリー持ちが最大4.5時間から最大6時間に向上(充電ケース込みで最大30時間)
- 新たな充電方法として「Apple Watch磁気充電器による充電」が追加
- 充電ケースへのスピーカー搭載、近距離の位置検出が可能なU1チップ搭載により、これまで以上に居場所を探しやすくなった
デザイン・外観
MagSafe充電ケース
大幅に進化したAirPods Pro(第2世代)ですが、パッと見のデザイン・外観に大きな変更はありません。サイズは第2世代・第1世代とも30.9 x 24.0 x 21.8 mmと同じです。
AirPods Pro(第2世代)のMagSafe充電ケースには、主に「探す」アプリ使用時に活躍してくれるスピーカーが新搭載されました。スピーカーホールはLightningコネクタと並ぶように底面に配置されています。
スピーカー搭載に加え、側面にはストラップループ(ストラップホール)がもうけられました。
手元にあった適当なストラップを装着してみました。紐を通す穴は広めですので、どのようなストラップでも取り付けられるかと思います。
ストラップを取り付ければ紛失防止・落下防止に役立ってくれます。通した紐はそのままに取り外しできるテープアジャスターバックル(カチャっとするやつ)付きのストラップと相性が良さそうです。
リセットなどに使用する設定ボタンは、MagSafe充電ケースの背面にあります。
- Appleデバイス以外とペアリングする:設定ボタンを約5秒長押し
- AirPodsをリセットする:設定ボタンを約15秒長押し
AirPods Pro(第2世代)では、AirPods Pro本体に加えMagSafe充電ケースもIPX4等級の耐汗耐水性能に対応しました。ただIPX4等級はいわゆる「生活防水レベル」の防水性能ですので、基本的にはこれまでと同じように濡れないように気をつけたほうがよさそう。
ちなみに、第1世代向けの保護ケースを第2世代に装着してみるとサイズ的にはぴったりでした。
スピーカーホール・ストラップループは隠れてしまうものの、スピーカーからの音はしっかり聞こえますし、使用には問題なさそう。つなぎとして第1世代むけの保護ケースを着けておくのもありです。
AirPods Pro本体
中身は大きく進化しているAirPods Pro(第2世代)ですが、外観は第1世代と大きく変わっていません。第2世代・第1世代ともサイズは30.9 x 24.0 x 21.8 mmで同じです。
耳に装着したときに肌にあたるところに「肌検出センサー」があります。
第1世代では光学センサーでの検知でしたので、暗い環境では誤作動することもありました。肌検出センサーに変更された第2世代では、より正確に装着状態を検知してくれます。
うどん部分(凹んでいる部分)を上下にスワイプすることで音量調節が可能になりました。
iPhoneを取り出さずに音量調節できるようになったのは個人的にも嬉しい進化です!
AirPods Pro(第2世代)にはXS/S/M/Lの4サイズのシリコーン製イヤーチップが付属されています。第1世代ではS/M/Lの3サイズでした。 なお、Mサイズはあらかじめ装着されています。
イヤーチップは指でつまみ引っ張るとかんたんに外せる仕組みになっています。
iPhoneの「設定」>「AirPods Proの名前」>「イヤーチップ装着状態テスト」で装着中のイヤーチップのサイズが合っているかどうかをテストできます。
ノイズキャンセリング性能が体感できるレベルで向上
AirPods Proの目玉機能といえば「アクティブノイズキャンセリング」機能でしょう。Appleによると、AirPods Pro(第2世代)のノイズキャンセリング性能は、第1世代と比べて最大2倍の雑音を消すとのこと。
普段から第1世代を愛用していた私ですが、第2世代のノイズキャンセリング性能は明らかに向上しています。「言われてみればよくなってるかな?」というレベルではなく、はっきりと体感できるレベル。
Apple Watchの「ノイズ」アプリに、AirPods Pro(第2世代)のノイズキャンセリング効果をデシベル表示で可視化できる機能があります。
「ノイズ」アプリを使って、どの程度ノイズを抑えられるかを確認してみました。
まずエアコンと空気清浄機が駆動している室内。
さほど雑音のない室内でAirPods Pro(第2世代)のノイズキャンセリングをオンにしたところ、41デシベルから22デシベルに低下しました。
騒音の大きさ | 騒音の目安 | 騒音の具体例 |
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80デシベル | うるさい | 走行中の電車内 救急車のサイレン(直近) パチンコ店内 |
70デシベル | 高速走行中の自動車内 騒々しい事務所の中 蝉の鳴き声(直近) | |
60デシベル | 普通 | 走行中の自動車内 普通の会話 デパート店内 |
50デシベル | 家庭用エアコンの室外機(直近) 静かな事務所の中 | |
40デシベル | 静か | 閑静な住宅街の昼 図書館内 |
30デシベル | 深夜の公害 鉛筆での執筆音 | |
20デシベル | きわめて静か | 木の葉のふれあう音 雪の降る音 |
上は騒音の大きさの目安です。20デシベルの具体例を見ると「木の葉のふれあう音」「雪の降る音」となっていますが、体感的にはほぼ無音です。音の感じ方には個人差があるため一概には言えませんが、はじめてノイズキャンセリングを体験する方であれば、「こんなに静かになるんだ」と驚くはず。
「走行中の自動車内」レベルの騒音が、ノイズキャンセリングによって「図書館内」レベルに。音楽を再生すれば、騒音の存在をほぼ感じないレベルです。
耳を防ぎたくなるほどの約82デシベルの環境では、ノイズキャンセリングによって約57デシベルになりました。こちらも音楽を再生すれば気にならないレベルです。
第1世代と比較してみると、第2世代のほうが高音域の騒音をよりかき消してくれている印象を受けました。40デシベル程度の比較的静かな環境ではほぼ変わりませんが、60デシベル以上の騒音となると明らかに耳に入ってくる騒音が第2世代のほうが少ないですね。
2022年現在、完全ワイヤレスイヤホンではトップクラスのノイズキャンセリング性能です。
「適応型環境音除去」機能で感じられる恩恵は限定的
AirPods Pro(第2世代)には、周囲の音を取り込める「外部音取り込みモード」というリスニングモードがあります。たとえば待合室で呼び出しを待っているとき。外部音取り込みモードをオンにしておけば、AirPods Proを装着した状態でも反応できます。
「自然な聞こえ方」に定評のあるAirPods Proの外部音取り込みモードですが、第2世代では「適応型環境音除去」機能が新搭載されました。
Appleによると「通過する車のサイレン、工事の音、さらにはコンサートでの大音量スピーカーなどの大きな周囲のノイズをオンデバイス処理で抑えることができ……」とのこと。
予期しない大音量の騒音があったときに、その騒音を軽減してくれる機能、ということですね。
適応型環境音除去の効果を確認しようと、騒音の大きい環境に出向きましたが、その効果をはっきりと感じ取ることはできませんでした。相当大きな騒音でないとこの機能の恩恵を感じられないのかもしれません。
正直なところ「効果があるような、ないような」という感じ。「適応型環境音除去?なんだか凄そう!」と期待しすぎると「こんなもんか」となっちゃう可能性があるので注意ですね。
適応型環境音除去についてはハテナでしたが、外部音取り込みモードの自然な聞こえ方はさすがですね。一瞬、「あれ、着けてる?」と錯覚してしまうくらい自然です。自分の声の聞こえ方も自然ですし、音の方向や距離感も分かるほど。
外部音取り込みモードの自然な聞こえ方には、高いノイズキャンセリング性能と同じくらい驚かされます。
H2の恩恵か、音質の向上を確かに感じられた
続いてはAirPods Pro(第2世代)の音質についてです。
第1世代と比較してみると、第2世代は明らかに音質が向上しています。まず気が付くのは、中音域から高音域の存在感。それぞれがしっかり分離していて、音のティディールを第1世代上に感じ取れます。女性ボーカルの楽曲は特に違いが分かりやすいですね。
Appleが「より原音に忠実なサウンド」とうたうように、偏ったクセがなく、非常に聴きやすい音という印象です。
AirPods Pro(第2世代)の高いノイズキャンセリング性能や音質を支えるのが、新たに搭載されたH2チップ。耳に音として聞こえるその前に、その人の耳の形に合わせて瞬時にチューニングされます。
10万円を超えるようなイヤホンを常用する方は別として、ほとんどの方がAirPods Pro(第2世代)の音に満足できるはずです。
スピーカー & U1チップでより見つけやすくなった
MagSafe充電ケースにスピーカー、そして近距離における位置を検出できるU1チップが搭載されたことで、より見つけやすくなりました。
「探す」アプリから「サウンドを再生」をタップすることで音を鳴らせます。スピーカーから発せられる音は大きく、バッグの中に入っていたりソファのクッションの隙間に入り込んでいたりしても聞こえるくらいの音量です。
Appleの探しのものタグ「AirTag」よりも音量は大きいです。
iPhone 11/12/13/14シリーズをお持ちの方であれば、「正確な場所をみつける」機能を使用できます。MagSafe充電ケースがある方向、距離を0.1m単位で表示してくれます。
バッテリー・充電周りの進化で使い勝手が向上
AirPods Pro(第2世代)のバッテリー持ちは、AirPods Pro本体で最大6時間、充電ケース込みで最大30時間となっています。第1世代よりもバッテリー駆動時間が延びました。
ANC/ 外部音取り込みモード | AirPods Pro(第2世代) | AirPods Pro(第1世代) | |
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AirPods Pro単体 | オン時 | 最大5.5時間 | 最大4.5時間 |
オフ時 | 最大6時間 | 最大5時間 | |
充電ケース込み | 最大30時間 | 24時間以上 |
ワイヤレスイヤホンにとってバッテリー持ちの良さは使い勝手に関わってくるところ。ノイズキャンセリングをオンにして5.5時間ももってくれば十分です。
また、MagSafe充電ケースは、Apple Watch磁気充電器による充電にも対応しました。
私はApple Watch磁気充電器をデスクの上に設置しているので、同じ充電器でAirPods Proを充電できるようになったと考えれば便利ですね!
充電方法は合計4パターンになりました。地味に思える進化ポイントですが、他のデバイス向けの充電器やケーブルを共有して使えるのは便利です。
なお、サードパーティ製のApple Watch充電器・Apple Watch向けモバイルバッテリーでもMagSafe充電ケースを充電できることを確認しています。
レビューまとめ:AirPods Pro(第2世代)は買い?
軽い装着感・ノイズキャンセリング性能・外部音取り込みモード・使い勝手など、AirPods Pro(第2世代)のどこを見ても現時点の完全ワイヤレスイヤホンではトップクラスだと感じました。
言わずもがなAppleデバイスとの連携は秀逸ですし、弱点を見つけるのが難しいくらいです。
ネガティブな点を挙げるとすれば、以下の2点でしょうか。
- 価格が39,800円(税込)と高い。
- ワクワクさせてくれるアップデートがなかった。
約4万円ですから、気軽に買える価格帯ではありません。情勢的に価格が高くなってしまうのは仕方のない部分もありますが、少なくとも気軽に買える価格ではないですよね。
ノイズキャンセリング性能や音質がアップし、進化しているポイントはいくつもあります。ただ、これは個人的な願望でもありますが、たとえば体温を測れるとか心拍数を測れるとか、ユーザーをワクワクさせてくれるような機能が欲しかった、というのが本音ですね。そうすれば39,800円という価格に対しての印象も違っていたのかもしれません。
AirPods Pro(第2世代)の購入を価格的に躊躇している、という方は、第1世代を検討してもいいかと思います。こちらも安くはないですが、旧モデルとなったタイミングで価格が下がっています。第2世代と比べてしまうと優劣がつくものの、第1世代も優秀なワイヤレスイヤホンという印象は第2世代を手にした今でも変わりません。
iPhoneなどAppleデバイスとの連携にこだわりがなければ、ソニーの「WF-1000XM4」を選択肢にいれてもいいでしょう。ノイズキャンセリング性能・音質とも定評があります。
価格さえクリアできれば、やはり私はAirPods Pro(第2世代)を推したいと思います。やはりノイズキャンセリング性能には凄まじいものがあります。それにAppleデバイスとの連携の良さを考えると、AirPods Pro(第2世代)を選ぶ理由があります。