Apple初のオーバーイヤー型ヘッドフォンとして登場した「AirPods Max」。税込67,980円という強気の価格設定ということもあって、期待の声よりも「高過ぎ!」などという否定的な声のほうがよく耳に入ってきます。
いくら前評判が悪くても、iPhoneやiPad、Apple WatchにMacとApple製品に囲まれている僕にとっては、AirPods Maxは気になる存在にかわりはありません。
「価格も価格だし、今回はスルーしよう」
「いやいや便利に使っているAirPods Proのヘッドフォン版なんでしょ?これは買って確かめないと」
天使と悪魔がささやき合うような葛藤がありながらも、結局は人柱になる覚悟を決め、AirPods Maxを購入しました。
AirPods Maxが届いてまだ2日目ではありますが……AirPods Maxは買わなくていいです。正確に言うと、満足できるのは5%の人だけで、残りの95%の人はスルーでOKです。
AirPods Maxを買わなくていい理由
僕がAirPods Maxを買わなくていいと感じるのは、以下の4つの理由からです。
- 便利さは複数のAppleデバイスがあることが前提
- 好みが分かれる個性的なデザイン
- 価格が高過ぎる
- 価格帯的に音質重視なら他の選択肢が入ってくる
僕の手元には、AirPods Maxとライバル機種となるSONYのWH-1000XM4、そしてBOSEのNOISE CANCELLING HEADPHONES 700(以下NC700と表記)があります。
「ノイキャンワイヤレスヘッドフォン」というくくりなら、必ずと言っていいほどこの2機種の名前が挙がってくるかと思います。この2機種の存在があるからこそ、「わざわざAirPods Maxを選ぶ必要がない」と感じてしまうのです。
① 便利さは複数のAppleデバイスがあることが前提
僕がそうであったように、複数のAppleデバイスをもつ人からすると、AirPods Maxは気になる存在かと思います。AirPods Maxを検討している人は、きっとAppleデバイスとの連携の便利さに期待している、もしくはすでにその連携の便利さを知っているという人かもしれません。
- かんたんなセットアップ
- AirPlay 2と自動切り替え機能によるシームレスな接続切り替え
例えばiPhoneでAirPods Maxのセットアップを済ませれば、そのペアリング情報は同じAppleアカウントでログインしているその他のAppleデバイスにも共有されすぐに使える状態になります。
iPhoneで音楽を聴いていて、次の瞬間YouTubeを観るために接続先をiPadに切り替えたいときは、iPadで動画再生してあげれば自動的に音声がiPadに切り替わります。接続先を切り替えるたびにBluetooth設定をいじる必要はありません。
AirPods Maxと、iPhoneやiPad、Apple Watch、MacなどのAppleデバイスと相性がいいことは言うまでもありませんね。これはAirPodsやAirPods Proにも言えることです。
ただ、AirPods Maxに接続するデバイスがiPhone1台しかない場合は、「これってAirPods Maxを選んだ理由ある?」となってしまう可能性があります。連携の便利さは複数のAppleデバイスがあることが前提です。
WH-1000XM4やNC700の存在を意識しながら書くと、3台以上のAppleデバイスがないと、「連携の便利さからAirPods Maxを選ぶ理由」としては弱いと感じます。
なぜなら、WH-1000XM4とNC700でも最大2台までなら、Appleの自動切り替え機能とほぼ同じことができるからです。しかもこっちはOSを選びません。
WH-1000XM4とNC700には「マルチポイント」といって、最大2台のデバイスに同時接続できる機能が搭載されています。AirPods Maxと同じようにシームレスな切り替えが可能なんです。
厳密に言うと接続元で再生を一時停止させてから、接続先で再生という流れになるのですが、そう手間な話ではありません。
- 3台以上のAppleデバイスでシームレスな接続切り替えを実現したい
- 2台のデバイス(OS問わず)での自動切り替えできれば十分
あなたが後者であれば、わざわざ7万円近くするAirPods Maxを選ぶ必要はありません。WH-1000XM4やNC700で同じことができますし、こっちは「iPhone+Androidタブレット」「iPad+Windowsパソコン」と最大2台の組み合わせは自由です。
② 好みが分かれる個性的なデザイン
AirPods Maxは、光沢があり大きいイヤーカップと存在感のあるメッシュ生地のイヤーパッド、そして反り返ったような形状のヘッドバンドと、そのデザインは非常に個性的です。
AirPods Maxには全部で5色のカラーラインアップがあります。
「AirPods Maxを購入することじたいが冒険なんだし、カラーも冒険してみるか」ということで、僕はピンクを選択しましたが、カラーの主張もあって、なかなかパンチのある雰囲気。
AirPods Maxを付属のSmart Coverに収納することによって、AirPods Maxが超低電力状態になり、バッテリーが長持ちするとのこと。AirPods Maxには電源のオン/オフがないので、Smart Coverに収納することで電源オフに近い状態になるのでしょう。
それはいいんです。最大20時間の連続再生が可能なバッテリー持ちにも文句はありません。問題はSmart Coverに収納したとき。このとき、AirPods Maxのダサさはマックスになるんです。
開封したときにも思ったのですが、この丸みといい谷間といいあれにしか見えないんでよね。ピンクだから余計にそう思うのでしょうか。それとも僕の心が汚れてるから?
実はAirPods Max本体のデザインについては、僕はありだと思っているんです。カブトムシや防音のためのイヤーマフを連想させる大きいイヤーカップも、「たくさんあるヘッドフォンのなかでひとつこんなデザインがあってもいいのかな」と思っています。
ただ……ただですね。Smart Coverがダサすぎますよ。電車内で隣に座っている人がカバンの中からこれを取り出したら、思わず二度見してしまうでしょうね。
デザインで言えば、やはりBOSEのNC700ですね!これは誰が見てもかっこいいと思えるデザインではないでしょうか。
デザインに関しては、人それぞれの好みや感じ方があるので断定的なことは言えません。が、万人受けするとは言えない、好みが分かれるデザインであることは確かです。
③ 価格が高過ぎる
AirPods Maxを買わなくていい理由の3つめは、「価格が高過ぎる」ということです。
WH-1000XM4とNC700が、だいたい35,000円から40,000円と言う価格帯で販売されていることを考えると(Amazonを参照)、AirPods Maxの税込67,980円は高過ぎます。
「AirPods Maxの61,800円は高くない」なんていう旨のレビュー記事をあちこちで見かけますが、どう考えても高いですよ。
確かにステンレススチールのフレームやメッシュ生地など、質感的には高級感を感じられるヘッドフォンだと思います。でも目新しい機能は、対応コンテンツが豊富とは言えない空間オーディオくらいで、ほぼないに等しいんですよね。そもそも、空間オーディオもすでにAirPods Proがサポートしている機能です。
Appleは「まったく新種のヘッドフォン」と謳っています。しかし、実際に使ってみた感想は「奇抜なデザインのノイキャンワイヤレスヘッドフォン」というもの。ただの「AirPods Proのヘッドフォン版」といったところでしょうか。
「新種のヘッドフォン」と謳うならば、イヤーパッドにウォーミング機能があったり、eSIMが内蔵されていてAirPods Max単体で電話通話できたりするぐらいインパクトがないと(これらの機能がいいアイデアとは思えませんが……)。とにかくそれくらいのインパクトがある、本当に新種のヘッドフォンであれば、例え10万円を超えても売れると思うんですけどね。
つまり言いたいことは、61,800円が高く感じてしまうレベルのものということです。少なくとも僕にとっては。
ちなみに、最新のA14チップを搭載するiPad Air(第4世代)は62,800円から購入できます。AirPods Maxの約1台分の価格ですね。そしてAirPods Max2台分の価格で、コスパが凄いと話題のM1チップを搭載したMacBook Airが買え、お釣りがきます。
④ 価格帯的に音質重視なら他の選択肢が入ってくる
AirPods Maxの音質は確かによく、WH-1000XM4とNC700とも聴き比べてみましたが、AirPods Maxのほうが音質は上だと感じます。
Apple Musicでマシン・ガン・ケリーとホールジーの『forget me too』で聴き比べてみると、音場の広さというか、奥行きがAirPods Maxでは大きく感じられます。女性ボーカルの高音がはっきり耳に入ってきて、高音と低音がしっかり分離している印象を受けました。
WH-1000XM4とNC700も音質はかなりいいんですが、同曲ではAirPods Maxよりも平坦な音に聞こえました。イコライザ設定を詰めていくとまた印象が変わる可能性がありますが、「音場の広さ」はAirPods Maxが圧勝ですね。もしかするとこれは、左右のイヤーカップにそれぞれ搭載されているH1チップの仕事の成果かもしれません。
僕自身、いわゆる高級イヤホン・ヘッドフォンの経験値は高くありません。そんな僕でもはっきりと分かる音質の良さがAirPods Maxにはあります。
しかし、ここで思い出すのはAirPods Maxの価格です。確かに音質はいいのですが、価格を考えると「7万円でこれか」という印象を受けるのも事実です。
僕は10万円を超えるような、高級イヤホン・ヘッドフォンはいままで使い込んだこともないですし、音のわずかな違いを聞き分けられる耳も持ち合わせていません。
これ以上の世界のことは分かりませんが、7万円だせば、きっともっといい音を出せるイヤホン・ヘッドフォンが他にあるのではないでしょうか。
いまノイキャンヘッドフォンを買うならAirPods MaxよりWH-1000XM4
AirPods MaxとWH-1000XM4、NC700のそれぞれを使ってみて、「いまノイキャンヘッドフォンを買うならWH-1000XM4だ」と感じます。
- ノイキャン性能は「WH-1000XM4 ≒ NC700 ≧ AirPods Max」
- WH-1000XM4の価格はNC700より少し安い
この2点の理由からです。実際にAirPods Maxが発売されてからはWH-1000X4の良さが再評価されているようですね。確かに音質・機能・ノイキャン性能とあらゆる点でレベルが高く、かつ価格が安いので(といっても安くはない価格だけど)、再評価されていることには納得です。
冒頭にも書きましたが、AirPods Maxに満足できるのは5%の人だけで、残りの95%の人はスルーでOKです。3台以上のAppleデバイスをシームレスに切り替えられるのはAirPods Maxの強みですし、音質もそれなりにいいですからね、そこにメリットを感じられるのならアリです。
AirPods MaxがWH-1000XM4と同じ価格帯で買えるのなら、また評価が違ってきたのだろうとも思います。もし仮にAirPods Maxの価格がWH-1000XM4並みだとしたら、AirPods Maxをおすすめしたでしょう。ということは、最大のネックはやっぱりその価格ですね。